カナカナブ族の伝説~サルが盗み食いをする理由



 大昔、カボチャの種は太陽の下で乾燥させてから煮込むと、砂糖のように甘くなったそうです。ある家にいたずら好きな少年がいて、そのことを隣村の友人から聞いてきました。そして、いてもたってもいられず、母親のもとへ行ってはしきりにカボチャの種をくれるようねだりました。


 しかし、母親は炊事に忙しく、「私はそんなものを持っていないから、おばあさんにもらいなさい」と言いました。少年が祖母のもとへ行くと、祖母は網の手入れに忙しく、「あなたのお父さんが持っているはずだ」と言います。少年は父親のところへ行きました。父親もまた狩猟の準備に忙しく、「兄のところへ行け」と言いました。少年は今度こそと思って兄にカボチャの種をねだると、兄は弓矢を磨きながら、「それはお母さんに頼めばいい」と言いました。


 そこで少年は再び母親のもとへ行くと、イモを煮ていた母は怒気を含んで、「無いものはありません」と叱責しました。少年もさんざんたらいまわしにされて、怒りを覚えたのでしょう。「これからは欲しいものはなんでも自分で盗んで手に入れることにします。もう誰にも頼りません」と言って、家を出ました。


 少年が森の中を走っていると木の棒が転がっていたので、この悔しさを忘れないようにと、その棒を自分の尻に突き刺しました。すると、にわかに姿が変わって少年はサルになってしまったそうです。棒はいつの間にか尻尾になりました。


 そして、サルになった少年は集落にやってきては欲しいものを盗み食いし、山へ帰るようになりました。サルの食い意地の悪さはこんなところからきているのだそうです。

(日本統治時代の調査文献をもとに構成)

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